大野眞輝 official blog

『いやだ』と連呼する子と出会って一番変わったのは私

time 2017/09/16


私は以前、小学校教員でした。

大学生の時から、小学校の先生になりたくて、灰谷健次郎の『兎の眼』を何度も読みました。

そのたびに、涙を流しました。

本当に、こんな感動的なドラマが、教員になると起こるのだろうか。

そう思っていたのです・・・・しかし、

 

実際に教員になると、

小説の世界よりももっと感動的な日々

 

が私を待っていました。

 

私は、ブログにその時のことを思い出しながら綴っていきます。

これから、小学校の教員になろうと思っている、

若い人に勇気を与えることができたら、最高です。

 





■■■

1.出会い

教員になって6年目、私はA君という男の子と出会いました。

A君をはじめ、私が担任したのは5年生のクラス。

段々と心も体も変わり始める時期で、

小学生の中では比較的難しい学年と言われていました。

 

私は、始業式に生徒たちと出会い、そして生徒たち一人一人の仲間を呼んでいきました。

 

「マー坊先生は、君たちとの出会いを最高に楽しみにしてきました。

だから、先生はみんなの名前を覚えてきました。

先生がみなさんの名前を一人一人呼んでいきますから、

呼ばれたら、『はい!!』と元気よく返事をしてくださいね。」

 

教室はざわつきました。

なぜなら、私はこの学校に数日前に転出してきたばかりだからです。

始業式の日までに、初めて会う子たちの顔写真を、前の学年の担任の先生にもらい、

顔と名前を一致させるために努力を費やしてきたのです。

 

どの子も、名前を呼ぶと、驚くのと同時にとてもうれしそうな笑顔を見せてくれました。

そして、A君の番。

彼の名前を呼ぶと、彼は渋々返事をしました。

 

「へ~い・・・」

 

私は、一瞬固まりました。

しかし、即座に言い返しました。

 

「先生は君に会うまでに、君の名前を覚えようと一生懸命努力した。しかし、君は適当に

返事した。そんな態度で一年間、過ごすのですか?」

あくまで笑顔で、しかし毅然と伝えました。

すると、A君はふざけた顔が一変し

「いえ。」

と答えたのです。

 

そして、

「もういちど呼ぶよ。A君。」

「はい!」

今度は、先ほどとはうって変わってはきはきとした声が返ってきました。

私は思わず、

「えらい!!!すぐに自分を変えることは大人でも難しい。君はそれを今やった。

先生は、君を一年間何があっても信じ続ける。」

と力強く言いました。

彼と、私の素敵な一年が始まったのです。

 

実は、A君は前の学年の時に、度々先生方を困らせていました。

全然、先生の言うことを聞かない、という申し送りを私は受けました。

さらに、毎日担任の先生はもちろん、他の先生からもA君は怒られ続けていたと聞き、耳が痛くなる思いでした。

でも、私は、

「この子にも絶対にいいところはある。

それを私が見つけ、彼自身に自信を持たせるのが仕事だ!」

と心の中で思っていたのです。

 

2.「いやだ」

始業式から数日。

国語の授業を行っていた時です。

その時は、ノートに書いた考えを、私に見せに来る場面でした。

A君がノートを持ってきました。

彼のノートを見ると、明らかに途中から気の抜けた乱雑な字がノートに並んでいたのです。

私は

「A君。字が丁寧ではないね。書き直します。」

そう伝えると、瞬間的に彼の言葉が矢のように返ってきたのでした。

「やだ!!!!!」

何度同じように伝えても、この「やだ!!!!!」の一点張り。

 

自称温厚な私もさすがに怒りそうになったが、ひと呼吸。

心を落ち着かせて彼にそっと伝えました。

 

「君は先生に『やだ』というのが、癖になっているんじゃないかな。

それでは、君が損をしてしまう。

君は、心にとっても素敵な優しさを持っているのに、損をしてしまう。

だから、先生が『やだ』と言わないでいられるいい方法を教えてあげるよ。」

 

そして、一枚に付箋に次のように書いて渡しました。

 

「先生に、何か言われたときは、まず

1.深呼吸しよう

できる限り息を吐くんだよ。

そして

2.『はい』と返事してみよう

ただ、先生から言われたことがどうしてもできない時だってあるよね。そうしたら

3.『先生、それは難しいです』と小さな声で言おう。

この付箋には、今日からの日付を書いておくから、出来たら◎。出来なかったら△を書くね。

この付箋はしばらく君の机に貼っておくよ。」

 

 

彼は黙って私の話を聞いていました。

私は最後に

「君ならできる!先生は信じているから。」

と肩に手を当てて伝えました。

彼は、小さくうなずいたのでした。

 

3.変化

次の日、さっそく彼に頼みごとをしました。

きっと、彼はすぐ変わるだろうとうすら期待していた私がいました。

でも、彼の答えは、

「やだ!!!!!」

だったのです。

そして、次の日も同じように

「やだ!!!!!!」

付箋には△が並んびました。

 

そして、次の日。

彼にこの方法は合っていなかったかな、と少し思い始めていたのですが、試しに彼にお願い事をしてみました。

「A君・・・・配りものを手伝ってくれないかな?」

・・・・・

「はい。・・・・」

私は、耳を疑いました。

彼から素直な「はい」の返事が返ってきた???

そう。彼は、素直に教師に返事をすることができたのです。

私は彼を褒めました。いや、褒めまくりました。

「すごい!!A君!!やればできるじゃないか!!!」

彼は、とっても嬉しそうでした。

その日から、なんと付箋には◎がずっと続いたのでした。

 

4.信頼

A君は、少し落ち着きのない子でした。

だからこそ、刺激を求める癖があったと思うのです。

教師にわざと叱られるような真似をしていたのも、刺激を無意識に欲していたのかもしれないと感じました。

そう思った私は、作戦成功したその日から、

叱るよりももっと刺激が強い“褒める”行為をし続けました。

「すごい!!!すごいよ!!」

もう、大声で褒めることも日常茶飯事でした。

 

落ち着きがない。

でも裏を返せば、非常に反応が早い子でした。

頭の回転が速く、教師の話を実は

「うんうん」

と小さく頷きながら聞き、理解したらすぐに作業に取り掛かる。

だから、私は長い話は彼には不向きだと考え、なるべく短い指示を出すようにしたのです。

そして、反応が早い彼を褒め続けました。

 

これがどんどんいい方向に転がりだしていったのです。

「マー坊先生の言うことをきちんと聞いていると、褒められる」

そう思った彼は、気づいたときには、私の話を10聴くようになってくれたのです。

すると、勉強の成績も急上昇。

ほとんどのテストが90点以上。

いやむしろ大半は100点となりました。

本人もテストを見て、びっくり!!

「こんなに100点を取ったことがないよ、先生!!」

 

彼は、自信を、自分自身に自信を持つようになってくれたのです。

授業中は、その行動力をフルに発揮して、意見を言いまくっていました。

討論形式の授業をした時には、彼は議論の中心にいつもいました。

 

5.突然

そんな楽しい日々が過ぎていたある日。

A君のお母さんから急に相談を受けたのです。

「先生、Aは先生と会ってから毎日学校が楽しい!と言っています。

ただ・・・

家庭の事情で、隣の学校の地域に引っ越すことになりまして・・・」

 

私は、ショックを隠せませんでした。

せっかくA君が成長してきて、これからもっとA君の成長が見たいと思っていた矢先のことだったので、言葉が出ませんでした。

 

その日は結局、隣の学校に引っ越す場合の手続き等の話をしました。

 

 

お母さんからの話で気持ちを落としていたのですが、その数日後。

またA君のお母さんが学校に来て話をしてくれました。

「実は・・・あの後Aとも家でよく話しました。

その結果、引っ越しはするのですが、隣町からバスでこの学校に通う方向で、話を進めることにしました。」

「え・・・」

私は嬉しさと、驚きでうまく言葉が返せなかったのですが、すぐさまお母さんが言葉を続けてくれました。

「Aは、先生のことが好きで・・・こんな事を言っていました。

『俺のことを本当に分かってくれるのは、マー坊先生しかいない』

だから、Aをこの学校にバスで通わせ続けます。」

私は、心の底から感動しました。

私のことをこんなに必要にしてくれるなんて。

 

6.私の先生は子どもたち

この子は私に、教師という仕事のすばらしさ、

いや、人間と人間のつながりのすばらしさ、

人に必要とされた時の心の潤いを教えてくれたのです。

そう思うと、私の心もA君に対して感謝の気持ちでいっぱいになりました。

 

私は、彼に

「誰しも人間は可能性がある。」

ということを教えたいと願っていました。

でも、私は彼から

「先生も大きな可能性がある。」

と逆に教えられたのです。

 

 

人が人を教え導く仕事。教師。

人を変えよう、なんて本当はおこがましいことなのかもしれません。

でも、彼が私を好きだと思ってくれたら、

彼は自ら変わり始めました。

日々、ゆっくりと成長し始めました。

 

そう考えると、自分自身にできることは、人を変えることではなくて、

常に自分自身を見つめなおしていくことなのかもしれません。

 

A君、ありがとう。

 

 

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