大野眞輝 official blog

発言できなかった子が自己表現できるようになった感動

time 2017/10/02


教育の世界でも、子どもたち、保護者のニーズではなく、ウォンツを満たしてあげることはとても大切だ。

ニーズとは、相手の要望。これはヒアリングすれば理解できる。

一方、ウォンツとは、相手が言葉には出さないが、無意識に求めている欲求。

関連記事:満足を超える感動 ~ニーズを満たすだけではリピーターとならない~

ニーズもウォンツも満たし、相手の期待感を遥かに上回る感動を与える。

与え続ける。

それができた時に、ドラマが起きる。





■■■

1.声が出ない・・・

小学校の教員をしていた時、ある女の子を担任した。

5年生のBさん。

大人しくて、どこか周りをキョロキョロと警戒している雰囲気だった。

しかし、時折笑った顔がとっても素敵だった。

 

Bさんを担任すると分かった時に、前学年の担任の先生から引き続ぎでこんな話が出た。

「Bさんはね、なかなか人前で話すことができないの。発表しようとすると泣き出してしまうの。」

この光景を、私も出会って2日目で見ることになった。

 

この日は、新しいクラスをスタートしたばかりということで、一人ひとり自己紹介を行っていた。

Bさんの番になる。

その場に立ち上がったはいいが、声が出ない。

しばらく沈黙が続く。

ついに、Bさんはしくしくと泣き出してしまった。

 

そんなスタートだったが、4月の後半。

家庭訪問を行った。

そこで、Bさんのお母さんの要望を聞くことになる。

「先生、うちの娘は家ではすっごく話すんですよ。今日、学校でこんなことがあった。先生がこんなことしてくれた。って何でも話してくれるんですよ。家では、先生が面白いって話題で4月は持ちきりでした。」

とりあえず、第一関門クリア。

Bさんは、私のことを信頼してくれていることが分かった。

お母さんが話を続けてくれた。

「でもね、やっぱり娘には、学校でもきちんと発表できるようになってほしいんです。」

この言葉が私の心に刺さった。

お母さんも、Bさんが学校で発表できないことを知っていたし、発表できるようになってほしいと望んでいた。

そして、Bさん自身も発表できるようになることを、目標としていた。

 

つまり、Bさんのニーズも、Bさんのお母さんのニーズも、「発表ができるようになること」だった。

それをサポートし、実現に向けて背中を押すのが私に与えられた使命だ、そんな風に決意を固めた。

 

2.小さな成功体験の積み重ね

いくつか、策を立てた。

(この策は、以前私がTOSSという教育団体で学んでいた方法を多く取り入れています。)

 

まずは、授業中声を全員で出す取り組みだ。

授業の中に、必ず声に出して読む時間を設けた。

例えば、国語の時間。

毎時間最初の5分間は、詩や俳句、名文を読み上げて暗唱する時間とした。

子どもたちは意外と、暗唱が大好きだ。

大きな声を張り上げて国語の授業がスタートしていた。

 

次に、クラス全員に一日一回は、発言する機会を設けた。

私の授業スタイルは次のような形をとった。

質問「1+2はいくつですか。A君。」(誰かをあてる)

子ども「3です」

この質問、応答形式で必ずどの子も一日一回は答えてもらうようにした。

Bさんにも一日一回は、当てるようにした。

ただ、最大限注意をはらった。

絶対に応えられる質問をすること。(簡単な質問)

短い言葉で答えられる質問をすること。

もし、ここで難しい質問をBさんにして、答えられなかったら、今後Bさんは一切発言できなくなってしまう。

だから、常に細心の注意を払った。

幸いにも、Bさんは授業中の質問に答えることができた。

か細い声ではあったが、きちんと答えることができた。

小さな一歩かもしれないけれど、大事な成功体験だった。

少しずつ、Bさんに短い言葉なら発言できる耐性がついていった。




3.討論形式で発言

教科によっては、ほとんど私が話さない討論形式をとっていた。

社会科などがそうだ。

テーマを決める。調べる。徹底的に討論する。

 

これが子どもたちに大人気だった。

友達と討論することが楽しかったらしい。

 

さて、この討論をしていると、Bさんはなかなか自分の考えを発言できない。

でも、彼女はノートに事前に書いたことなら発表できた。

だから、ノートに事前に自分の意見を書き、それを読むことで発表してみよう、と提案した。

すると・・・・

見事に意見が言えるようになったのだ。

泣いてしまうこともなく、きちんと自分の意見をノートを読みながら発表出来た。

これが1学期の終わりのことだった。

 

4.ウォンツは何か

Bさんも、Bさんのお母さんもニーズは「発表できるようになる」だった。

でも、ウォンツ、つまり本当に二人が求めている欲求は少し違うと思っていた。

 

お母さんは、Bさんの家でよく話す様子を知っていた。

だから、お母さんのウォンツは「本当の娘の姿をクラスのみんなにも知ってほしい」だと感じた。

 

また、Bさん自身はピアノを習っていた。ピアノが大好きだった。

ピアノは自己表現の一つだ。

だから、彼女のウォンツは「私もみんなの前で自分を表現したい。認められたい。」なのでは、と仮定した。

 

自己表現欲は、自己肯定感があってこそできる。

自分を大事に思えて、なおかつ周りから大事にされていると感じたときに、自己表現ができる。

 

そのため私は、まず彼女を褒め続けた。

発言できるようになってきたことを個人的に言葉で褒めた。

また、日記のコメントの中で褒めた。

発言ができた日には、お母さんに一筆箋を渡して、お母さんからも褒めてもらえるようにした。

「今日は嬉しいことがありました。Bさん、授業中に発言できたんです。すごい成長です。きっとドキドキしながら勇気を振り絞ったのだと思います。お家でも褒めてあげてください。Bさんの成長を見ていると、感動します。」

そして、クラスのみんなの前で褒めることもあった。

「Bさんは、最近すごく発言できるようになったよね。すごいよね。もともとBさんは優しい子。その優しい子が、発言するという心の強さも身につけようと頑張っている。優しさと強さ、この2つがBさんの魅力になっているよね。」

そんな話をすると、Bさんは顔を赤くしながらも笑ってくれました。

(私は、毎日日直の子をこのように褒めるようにしていました。)

そうやって、少しずつ少しずつ彼女の自己肯定感が高まるようにしていった。

すると、彼女の発言の数もちょっとずつ増えていき、2学期の中盤には、討論で発言するBさんの姿が日常となっていた。

 

5.副委員長に立候補

そして、時は流れ3学期。

新たにクラスの学級委員長、副学級委員長を決めようと学級活動を行っていた。

学級委員長をまず決める。

そして、副学級委員長を決めるときになる。

すると・・・

Bさんが副学級委員長に立候補してくれたのだ。

「Bちゃん大丈夫!できるよ。」

そんな風に周りの子に声援を受けながら・・。

恥ずかしそうにしながらも、みんなの前に出て決意表明を述べてくれた。

「私は、このクラスの副委員長になって、クラスを良くしたいです。委員長を精一杯サポートしたいです。」

 

この光景には、心が震えた。

4月頃は、みんなの前で発言できず泣いていたBさんが、今、目の前で副学級委員長に立候補している。

感動した。

この感動をすぐBさんのお母さんに手紙で伝えた。

すると、お母さんもこんな返事のお手紙を書いてくれた。

「先生、Bが副学級引張に立候補するなんて、夢にも思いませんでした。まさに、奇跡です。感動して思わず涙が出てきました。」

 

6.今度はバンドだ!

ただ、運命は皮肉なもの。

Bさん以外にも副委員長に立候補した子が多く、実際に副学級委員長になることはできなかった。

(私の学級ではどの子も平等。決意表明だけできたら、あとはじゃんけんで当選を決めていた。)

 

うわあ、せっかくBさんがさらに成長するチャンスが・・・・

でも、ここであることを思い出した。

そうだ、Bさんはピアノができるんだった。

よし。

私は、彼女にあることを提案した。

 

「Bさん、先生とお楽しみ会でライブしない?先生がギターと歌、Bさんがピアノ。どう?」

自己肯定感が高まりつつある今のBさんならいける。

そう思っていた。

そして、Bさんは、

コクっ

と首を縦に振ってくれた。

顔を真っ赤にしながら、でも可愛らしい笑顔で。。。

 

ライブは大好評だった。

そして、3月が終わり、彼女の担任である時間は終わった。

ただ、Bさんはその後も、ピアノ発表会に張り切って出演したり、合唱コンクールがある時には、ピアノの奏者に立候補してくれていた。

■■■

 

私は、BさんとBさんのお母さんのニーズだけではなく、ウォンツを満たそうと奮闘していた。

本当に、心の奥底の欲求を100%満たすことができたのか。

それは、今でもわからない。

ただ、Bさんが日々成長していく様子は、まさにドラマだった。

人は、誰でも可能性があり、成長できる存在。

そんなことをBさんが教えてくれた。

 

相手のウォンツを満たそうと思った時に奇跡が起こる。

奇跡は、感動の渦をつくる。

 

いつも人に感動を与える人間でありたい。

そう思わせてくれたBさんに、心から感謝している。




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