2024/09/09
この人と関係性を深めたいんだよな。
この人とこれからもつながっていたいだよな。
そんな風に感じる素敵な出会いを直前に控え、一番最初にするべきこと。
それは、その人と自分との間に「共通言語」を見つけることだ。
もしくは、「共通言語」を作ることだ。
会社でプレゼンを行う時にも、教師として子どもたちに授業をする時にも欠かせないことだ。
「共通言語」が、その人と自分の、懸け橋となる。
1.路上ライブで感じた「共通言語」
以前、私はある駅で路上ライブを行っていた。
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歌をうたうことには自信があった。
高校の文化祭などで歌うと、クラスの友達がいっぱい見に来てくれた。
だから路上ライブでも、人は勝手に集まってくれるだろうと、簡単な気持ちで臨んだ。
しかし・・・
実際やってみるとなかなか人が集まらない。
なかなか、じゃない!
誰もとまらない。
最初の一人目のお客さんが本当になかなか止まってくれないのだ。
遠くの方でひっそりと聞いてくれる人はいる。
でも、私に近寄って、私の前で聞いてくれることはなかった。
そんな日々が3日間ほど続いた。
さすがに、しびれを切らした私は、ある作戦に出た。
サクラ作戦!!!
友達にメールをして、お客さんのふりをして私の演奏を聴いてもらう。
その彼を中心にお客さんが集まるだろう、という考えだ。
しかし・・・
これもなかなか上手くいかない。
何曲歌えども、聴いているのは私の友人ただ一人だ。
そんな様子を見ていた友達もしびれを切らして一言。
「なあ、みんなが知っている曲を歌った方が良いんじゃない?」
私の頭に稲妻が走った。
そうか。
そうだよ!!
彼に言われるまで、私は誰も知らないような曲を歌っていた。
自分が良いと思う歌をひたすら歌っていた。
なぜか。
好きなアーティスト(ゆずやミスチル)のアルバムの中に収録されているような曲の方が単純に好きだったからだ。
大衆向けのシングルの曲よりも、アルバムに収録されている曲の方が自分も好きだし、感情移入ができる。
だから、マイナーな曲を歌っていた。
これは、日本語が通じない相手に、私が熱心に日本語で話しかけているようなものだ。
でも、友達の一言で目が覚めた。
自分が好きでよく知られていない曲を歌っても、誰も共感できないじゃん!!
ならば、誰もが知っている曲をうたおう!!
そして、本当に好きな曲は、人が止まってくれてから歌えばいいんだ。
それからというもの、私は、誰もが知っている曲、特にジブリの曲を歌いだした。
魔女の宅急便の『やさしさに包まれたなら』
耳をすませばの『カントリーロード』
さらに、サラリーマンが飲み会から帰る時間帯には
松山千春の『大空と大地の中で』
などなど。
もちろん、ミスチルやゆずの曲をうたうときには、誰もが知っているシングルの曲を歌うようにした。
すると、すると、
お客さんがみるみるうちに集まってくれるようになったのだ!!
一人もいなかったお客さんが、一曲歌い終えて顔を上げた時には、30人ほどになっていた。
お客さんと私の間の懸け橋になったのは
「あ、この曲知っている!!」
という共通言語。
同じ言語を使って、お互い考えを共有しながら、関係ができていくイメージだ。
一度、共通言語でつながると、お客さんと話もできるようになる。
お客さん「ミスチル大好きなんですよね。○○って曲は歌えますか?」
私「そうなんですか!!私もその曲大好きなんです。じゃあ、気持ち込めて歌うんで、聴いてください!」
ミスチルという共通言語の存在によって、私とお客さんの関係がさらに深まっていった。
嬉しいことに、この会話によって、どんどんと路上ライブのリピーターの方が増えていった。
まず、相手との共通言語を用意する。
それが、路上ライブでは、みんなが知っている曲を歌うことであり、共感できる歌をうたうことであった。
本当に自分が好きな歌は、その後に紹介すればいい。
2.こだわりが強い子
私は、以前小学校の教員だった。
私がこんなクラスにしたい!
こんな授業を一緒に作っていきたい!
と思っても、子どもとの関係性がよくなければ、それは実現されない。
信頼関係を作ることが、とても大事だった。
さて、クラス担任をしていると色々な個性を持った子と出会う。
その中でも、印象に残っているのは、こだわりが強い子だ。
こだわりが強い。
例えば、電車がとてもとても好き。
ゲームが人並以上に好きで、ずっとゲームの話をしている。
アニメが好きで、深夜やっているアニメのキャラクターの話をずっとしている。
そんな子を担任に持つことが何度かあった。
この子たちに共通していたこと。
それは、人とコミュニケーションをとることが苦手なこと。
人とダイレクトにコミュニケーションをとることが苦手だから、何か物に興味を持ち、その物を介して人とコミュニケーションをとろうとしている。
私も、一生懸命、彼らの話を聞き、理解しようとするのだが、アニメやゲームの話題にはついていけない。
だからか、新卒の頃はなかなか信頼関係を結ぶことができなかった。
彼らと私の間に共通言語がなかった。
3.こだわりの強い子とどうやって共通言語を作るか
何か共通言語は見つけられないか、と悩んでいた時、ある先生からいい方法を教えてもらった。
次のような方法だ。
まず、こだわりが強い子を担任すると分かったら、前学年の担任の先生から、クラスの集合写真をもらう。
そこで、その子の服装をよくチェックする。
こだわりの強い子は、なぜかお気に入りの服や帽子、靴を毎日身につけているケースが多いのだ。
毎日同じということが、心に安定感を与えてくれるそうだ。
(そういえば、スティーブジョブズは毎日同じデザインのセーターを着ていた。)
もし、その子がアディダスの帽子を好んで身につけていたのなら、自分もアディダスのグッズ(靴でもなんでもいい)を買って身につけておく。
そして、出会いの日である始業式。
その子に会った瞬間に、このように言う。
「○○君、アディダスの帽子好きなんだ!偶然!!先生もアディダスの靴持っていて、好きなんだよ!ほら見て!」
そして、最後にこのように伝える。
「同じアディダスだね!気が合うね!」
この「気が合うね」という言葉がとっても大事だ。
なぜなら、彼らはとっても生きづらい世界の中で生きている。
なかなか、自分のこだわりを周りに理解してもらえない。
なかなか気が合う友達が見つからない。
そんな世界の中で生きている。
友達から「気が合うね」と言われる経験が少ない。
むしろ、「変な奴!」とか言われて今まで生活してきたケースが多いのだ。
だからこそ、教師の「気が合うね」の言葉で、大きな喜びを彼らに与えることができる。
私も実際に、この方法を実践したのだが、本当に喜んでくれた。
顔を真っ赤にしながら笑顔で
「そうですか??」
と言ってくれる。
言葉とは対照的に、すごく嬉しそうだった。
この例ではアディダス=共通言語だったが、その子に合わせたものなら何でもいい。
私は、この共通言語を意識するようになって、個性の強い子とも信頼関係を結べるようになった。
出会いの瞬間で、相手から信頼されると、本当に一年間、その子は私を信じてついてきてくれる。
教師の要望や、教師が思い描いている世界を理解しようとしてくれるのだ。
繰り返すが、人と信頼関係を結ぶ時にまずやることはこれだ。
その人と自分との間に「共通言語」を見つけること。
もしくは、「共通言語」を作ることだ。
追伸
私は、記事の中で「こだわりの強い子」と表現したが、決して人に優劣をつける意味で書いたわけではない。
むしろ、「こだわりが強い」というのは、大事な才能だ。
世の中で特筆した才能を発揮している人に「こだわりが強い人」は実に多い。
そんな人たちと、共通言語を持ち、分かりあい、彼らの才能が存分に伸びる社会であってほしいと、強く感じている。